

順天堂大学医学部が学費の値下げを断行したのを皮切りに私立医学部の学費値下げが次々と打ち出されています。大学側は学費値下げにより国公立を志望していた優秀な学生の流入を促し、医学部を志望する学生には学費による断念をすることなく門戸が開かれることになったのです。事実、訪問した先々で、学費の値下げを行った大学の入試担当者は口をそろえて優秀な学生が増加したと話しています。
この医学部の潮流は、今後も続くと考えられます。昨今の定員増により、それまで私立の医学部へと進学を余儀なくされていた学生の層は、国立大学医学部へと入学できるケースも増え、それに伴い私立大学医学部の入学者層の地盤沈下が見受けられるようです。我々プロメディカスの追跡データからも数年前なら合格は困難と想定される成績の学生であっても何とか医学部合格を勝ち取っているケースも増えてきていることがわかっています。
私立大学に関しては、医師国家試験の合格率も受験者からの志願を勝ち取れるのかどうかの重要な指標であることから、いかに優秀な学生を確保できるのかは、大学存続の重要な鍵となっています。
そのため、今後も私立医学部は思い切った学費値下げの方向性を打出し、今まで医学部を目標としていなかった理系の優秀層を誘導することによって、学生の質を高めていく戦略を継続していくと考えられます。裏を返せば、今まで学力的に国公立には届かず、私立は学費の面で断念していた学生たちへは大きく門戸が開放されたことになったのです。
東日本大震災以降の医師を目指す志のある学生が増加していること、さらに日本経済の情勢から究極の資格といっても過言ではない医師という魅力ある職業を求めて、競争はさらに激化していく様相を呈しています。
受験学年にとって夏は天王山であることは言うまでもありません。特に医学部受験生は何と言っても受験の最高峰であることは間違いないので、対策もしっかりしておきたいものです。では、具体的には何に注意すればよいのでしょうか。
7月の時期は現役と浪人では勉強に使える時間に差が生じるので、個別の作戦は異なりますが、共通して意識しなければならないことがあります。それは志願理由を明確化しておくことです。例えば、国公立・私立ともに推薦入試を利用する場合は、受験を考えている大学の情報を収集することは不可欠になってきます。受験の科目も特殊なケースが多いためにしっかりとした調査が必要です。また直接、受験を考えている大学へ連絡を取り過去問を入手したり、要項を手に入れる必要もあります。私立のAO入試の場合などは志願理由などを作成するのに大変長い時間がとられることも多いので、下書きは始めておかないと出願時に内容のあるものを提出できない危険性があります。従って、推薦入試においてはしっかりとした志願理由が必要になるころは言うまでもありません。そうでないと提出すべき書類すら書けません。
一般入試においても国公立・私立問わず医師になる志願理由は明確化しておく必要があるので、自分自身、「なぜ、医師になりたいのか?」をきちんと整理しておかなくてはなりません。受験直前に付け焼刃で面接などに臨んだ場合は、特に私立大学医学部の面接官はプロですから完全に見抜かれてしまうでしょう。
7月は夏の期間で受験勉強のレベルを上げていくことはもちろん、原点に返り「自分の目標」を確認して、モチベーションを上げていくことが重要です。強い意志を形成しなければ夏の長丁場で集中力を保つのは難しいものです。
「志願理由」を確認しておくことは、将来を見据えた重要な戦略の一環といえます。